海外での生活
齋藤 裕 さん

コウノトリの団地
A回目
鹿島建設勤務



 きのうでやっと1ヶ月続いたラマダン(断食月)が終わり、今日 明日とラマダン明けの休みです。
3日の金曜日を入れて久しぶりの連休です。
 私達の住んでいるところはアルジェリア東部の都市コンスタンチ ーヌから西に70kmぐらいいったところにあるタジェナネットという 田舎町のはずれです。ここに我々外国人専用のキャンプを建設 し現在900人近くが住んでいます。今回はここでの生活や仕事 での悩みの一端をご紹介しましょう。





◆ 2500名以上が働いています 
 私が働いているアルジェリア東西高速道路(東工区)建設工事 も最盛期に入り、私のいる現場だけでも日本人99人、第三国人1 5カ国965人、アルジェリア人1466人、合計2530名という大所 帯になりました。第三国人はフィリッピン、インドネシアを中心にマ レーシア、ネパール、ミャンマーなど、中近東からはエジプト人、ト ルコ人、ヨーロッパからはフランス人、ドイツ人、ポルトガル人など が一緒に働いています。使用言語は英語がメインですが、アルジ ェリア人との間はフランス語か英語、第三国人とのやり取りは英 語です。通訳氏も日本からだけでなくエジプトからもアラビア語/ 日本語の通訳として3名来てもらっています。

◆ テロの不安はここも同じです 
 ご存知のようにアルジェリアでもテロ活動が盛んで、警察や軍隊 だけでなくフランス人やスペイン人が名指しで狙われており、我々 の移動もエスコートをつけるよう関係機関から命令されています。 キャンプだけでなく原石山や工事現場には警備会社から銃を持っ た警備員が派遣されており、24時間監視体制がとられています。 従って、夜キャンプから近くの町に出かけたり、金曜日の休みの 日に外出したりは自粛せざるを得ません(といっても、出かけたと ころで何があるわけでもありませんが)。

◆ 外出できないのでクラブ活動をしています 
 そこで、我々のキャンプではクラブ活動を奨励しており、現在、日 本人を中心にソフトボールラグビーゴルフテニスエアロビッ 柔道などのクラブが、第三国人を中心にバスケットサッカー が、混成でサッカーフットサルが活動しています。キャンプ内に はサッカー場、ソフトボール場、体育館、バスケットコートをもうけ、 キャンプの近くに草原ゴルフ場を開発しました。ゴルフ場といっても 羊や牛のえさとなる草を自然にはやしている場所で、ここに9ホー ル、パー36、距離2700mのコースを作りました。敷地使用料年 3万円ぐらい。もともと家畜の放牧用なので手を加えたのはグリー ンとなる所に砂を撒いただけで、あとは自然のまま。従って、羊や 牛の糞はあたりまえ、30cmぐらいの緑のトカゲが顔を出したり、 いろんな草があちこちはえ、時々ボールを隠してしまう。週休日の 金曜日にゴルフに行くと砂グリーンには羊や牛の足跡がしっかり とついており、時々糞がころがっています。すべてが荒地でゴルフ 発祥の原点に戻った感じです。自慢は距離で、商売柄衛星を利用 した最新の測量技術を使って計っただけに距離は正確。
グリーンは砂、雑草が生えてきた

◆ 食事も一通りではありません 
 キャンプには食堂が日本人用、第三国人用とアルジェリア人ス タッフ用と3つあります。日本人食堂では日本人、インドネシア人 のコックが日本食とヨーロッパ人用の食事を、第三国人の食堂で はインドネシア人、フィリピン人、アルジェリア人のコックがアジア 食とアラブ食を作っています。

困るのは宗教による食事制限です。アラブ世界では豚肉は食べ ないのでこちらで手に入らない。となると羊の肉は高いので鶏肉 か硬い牛肉。ネパール人、マレーシア人、スリランカ人の中には 牛肉を食べない人がいるため時々特別食を準備。

また、ラマダン(断食月)に入ったらエジプト人やインドネシア人は 日中飲まず食わずで、夜は7時ごろから、朝は午前3時過ぎに食 事を取ります。特に朝の食事時間が他の人と異なるため、特別体 制を組まされます。
世界遺産古代ローマ時代のジェミラの遺跡

◆ 頭を悩ます安全運転教育 ◆
 仕事での悩みとなるときりがありませんが、我々が一番頭を悩 ませているのはドライバーの安全運転教育です。

アルジェリアに来た当初我々がまず驚くのは車のスピードの出し 過ぎと無理な追い越しが当たり前のように行われていることです。 前があいていたら詰め、ピッタリと前の車にくっついて走り、カーブ であろうが上り坂であろうがどんどん追い越しをかけます。8月に はこの無謀運転で乗っていた日本人が運転手ともども事故で亡く なりました。国道も現場の中のパイロット道路も関係なく、乗用車 であろうが大型ダンプであろうが、スピード出しての運転がかっこ いい、運転がうまいと思っているふしがあります。乗用車、バスな ど80台からの車がありますが、採用したとき安全教育を行い、安 全運転に心がけるとの誓約書をとり、運転席のそばにスピード制 限何km書いたワッペンを貼ったりと対策は講じていますが、あま り効果は上がっていません。運転手は、「あいつは運転が下手だ ったから事故を起こしたのだ。俺は違う。」と考えているようです。 この国では我々外国人はテロにあうより交通事故にあう確率がず っと高いのです。

◆ 「恥ずかしい」は通用しません ◆
 1998年からエジプト、アルジェリアとアラブの世界で仕事してい ますが、これまでの経験からアラブ人の世界には「恥ずかしい」と いう言葉がないのではと感じています。日本では「恥ずかしいから やめておこう」、「そんなことやったら恥ずかしい」などと考えてある 行動を断念する場合が多々ありますが、こちらではまったく通用し ません。能力のある人の給料を上げると同じような仕事をしている 能力が劣る人は必ずといっていいほど、「俺も同じ仕事しているの だから俺の給料も上げてくれ。」と言ってくる。いくら仕事の能力、 生産性が違うといっても理解できない。勤務態度が悪いので出勤 停止5日間と懲罰を与えても、俺は悪くないと言って堂々と出勤し てくる。

もう一つない言葉は「俺が悪かった」、「すみません」など自分の非 を認める言葉。
自分のミスで交通事故を起こしても「俺は悪くない。ハンドルがき かなくなった。」、「相手の車がぶつかってきた」と言って平気で嘘 をつく。とにかく自分を守る為の言い訳はこちらが感心するぐらい。 その場さえ乗り切ればいいので嘘八百並べる。泥棒は現行犯で ないと逮捕されないので、あいつが主犯だと分かっていても手が 出せない。「水に流してやり直し」という発想は何処にもない。私た ちが新しく赴任してきた外国人に必ず「ここでは物を盗まれたほう が悪い。」と忠告しています。

◆ 文化の違いを再認識させられます ◆
 温暖湿潤で自然に逆らわず生きてきた島国に住む日本人、みん な一緒がいいと「和」を尊ぶ日本人、「嘘は泥棒の始まり」と小さな 頃から言われた我々と自然に逆らわないと生きてゆけない砂漠に 住む人間、謝ったら負けという考えが身についている人たち、他の 人との関係よりアラーとの関係を重視する人たちとは所詮発想が 違い、生き方も違うということを再認識させられています。


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