海外での暮らし
吉永 陽子 さん
 
  



長崎県立西高卒業後、長崎大学薬学部卒、長崎大学付属病院に3年間勤務。 1974年にシンガポールに渡り25年間銀行に勤務。2001年11月に退職しました。 現在は趣味の油絵と格闘中。



壁にかかった絵は吉永さんの作品です。



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うらやましく思う政府と国民の関係

建国37年 2人三脚で困難乗り越えて

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 シンガポールの独立記念日は長崎原爆の日と同じ8月9日で す。1965年にマレーシアから分離独立したものの何の天然資源 もなく、水も食料も他の国に依存し、長崎ちゃんぽんのようにさま ざまな民族が集まり公用語も英語、中国語(華語)、マレー語、タ ミール語と複雑な小国が驚異的な成長を遂げて近代国家に発展 したのは奇跡といわれています。

 しかし、建国から37年たったいま、抱えている問題も少なくあり ません。その一つが後継者問題です。初代首相のリークァンユー から12年前に首相の座を譲られたゴーチョクトンは恒例の独立記 念日の演説で「第二世代の私たちはもう60歳を超えてしまった。 10年後に国の柱となるのは20代、30代の第3世代だ。みんなが 個人の利益ばかりを追求して、国益を優先せず、国のために貢 献しなければ国は滅びる。愛国心を持ってほしい」と、若い世代 に訴えました。

 確かにシンガポールを嫌って移民していく若者も少なくありませ んが、日本人の私にはこの政府と国民の関係は兄弟のようでうら やましく感じます。清廉潔白、頭脳明せき、優れたリーダーシップ を持つ反面ストイックすぎる兄。かたやバイリンガルは当たり前と 能力は高いのに、無駄なことは「したくない超合理主義の弟。しっ かりものの兄は心配でたまらずつい口うるさく言って弟に反抗さ れ、時には反発しあって、本音でぶつかりあう。それでも、ひとた び危機が起こるとぴったりと息の合った二人三脚で困難を乗り越 える、そんな兄弟です。

 印象深いこんな事件もありました。ヘロイン15グラムの持ち込 みで死刑になるのは有名ですが、日本にない刑罰を知っていま すか?それはむち打ちの刑です。麻薬、強盗、、不法就労、痴漢 だってむち打ちです。水で湿らせた1.2メートルの籐(とう)のむち でお尻をピシッとやるのです。最高24回、医師も立会います。皮 膚は裂け、一生傷が残るそうです。1993年にアメリカ人の少年が 車にペンキでいたずらして捕まり、むち打ち6回の刑を受けまし た。アメリカ人のメディアはこの刑を野蛮で残酷と非難し、ついに クリントン大統領も抗議してきました。その時、リークワンユー上 級相は「アジアにはアジアのルールがある。そこでは個人の人 権・自由よりも社会の秩序・安全が重視される。」とニューヨークタ イムズに反論し、少年は減刑にはなったもののむち打ち4回の刑 が執行されました。
 
吉永さんの作品です。



 このころシンガポールではチューインガムの禁止やたばこの投 げ捨て罰金500ドルと「クリーン・アンド・グリーン」運動の真っ最 中で政府の厳罰主義への国民の非難が上がっている時でした。

 しかし、大国アメリカに対して毅然として一歩も引かない政府を 国民は誇りに思い、圧倒的に支持したのです。だから、私には確 信できます。今は政治より携帯電話でのおしゃべりに夢中な3代 目だってシンガポールを他人任せにはしません。彼らが二人三脚 の新たな相棒になって、さっそうと歩く姿を早く見たいものです。

この記事は長崎新聞に掲載さ れたものですが、このたび一時 帰国された吉永陽子さんより掲 載の申し出を受けています。

「世界の街から海外の長崎人」 2002年10月13日の記事より






高校時代の吉永さんです。




2007.8.6長崎市内にて
■ お盆の為に帰国された吉永さんにお会いしてお話を伺いました。 ■

結婚してシンガポールに渡り、そこで働きたいと思いましたが、日本の薬剤師の免許は シンガポールでは使えませんでした。しかし、運よく銀行で働く機会を得ました。

シンガポールでは、働くにあたって男女の差とか、未婚か既婚かとかは全く関係ありあ ません。実力の世界です。その分厳しい世界でもあります。

日本では年金の問題が大きく取り上げられていますが、シンガポールでは自分の給与 から2割、会社が同額を出して年金として積み立てていきます。

53歳で早期退職をしました。今はシンガポール人と結婚した娘の家族と一緒に暮らして います。
孫がふたりいますので、今年も1ヶ月間は日本の幼稚園に入れるために長崎に滞在しま した。孫には日本語も話せるようになってもらいたいからです。

将来日本に帰ってくるかどうかは未定ですが、孫がもう少し大きくなったら出来るかもし れませんね。



  



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